音楽で笑いを起こす


今回は少し変化球です。

コメディアン/ミュージシャンの
Rob Paravonian

さんのパフォーマンス「パッヘルベル・ラント」です。

Pachelbel Rant

日本にもよくいる、「ギターと歌を使うコメディアン」スタイルです。

これは彼の一番有名なネタで、ご存知クラシックの名曲、ヨハン・パッヘルベルのカノンをパロディにしたものです。

英語ですが、音楽は言葉を超えます。見ているだけでなんとなく内容はわかるし、笑えてきます。

何を笑いのポイントにしているかというと、このカノンという曲の和音の進行についてです。

D – A – Bm – F#m – G – D – Em/G – A

この曲の有名な「カノン進行」というヤツで、これは現代のポップスでも数えきれないくらい流用されている王道の進行です。

とにかく万人受けのする定番の響きなのです。そのため使い古されていて、少々退屈でもある。そこをネタにしているのですね。

アンサンブルにおけるチェロの気持ちを代弁しているところで笑いが起きます(1:20)。

「バイオリンやヴィオラはとてもきれいなメロディを弾くけど、チェロはずっと同じ8つの四分音符を繰り返すだけなんだ。54回さ、数えたんだ。それ以外にすることなんてないんだ」

まとめるとこんな意味ですが、見た方が面白さは伝わります。

後半は、現代の名曲をとりあげて、それがカノンの進行にそれてしまうという展開。アブリル・ラヴィーンやエアロスミスの曲がいつのまにか「ラーラララー」につながってしまって、笑ってしまいます。

最後はビートルズの「Let it be」の歌詞を変えて、パッヘルベルを呪います。

五分たらずのショーですが、すごく笑えます。音楽は人間の意思によって笑いにも使えるのです。美しい名曲たちが一気に滑稽な舞台装置に変わってしまいました。

たまにはこういうのもいいでしょう。


おとやガイドの方向性


 

【「おとやガイド」は教育的な立場から発信している】

 

わたしは音楽活動(主に作曲)をしていて、人々にも作曲を教えようとしていますが、

 

日本の多くのレッスンやスクールで言っているように、

 

「音楽で食おう!」

「メジャーデビューを目指して」

「夢を実現」

「あこがれのミュージシャンと同じステージへ」

 

などというメッセージは一切出していません。

 

なぜなら、このようなスクールとは目指すものが異なるからです。

 

ですので、上記のようなことを実現するための詳細な情報は、わたしからは得られないと思ってくれた方がいいです。

 

わたしの提供する知識は、むしろ上記の方向性とは逆に進む上で役に立つことが多いです。

 

すなわち

・メジャーデビューは目指さない

・音楽だけで食おうとしない

・あこがれのミュージシャンと同じステージに立たない

 

ということです。

 

なぜなら、「おとやガイド」の目的は、音楽をやる人たちをそういう限定的な目的にフォーカスさせることではないからです。

 

音楽をやること、とくに作曲という知的営みは、思考力や感性を楽しみながら高めることになる、総合的な能力開発のツールとして発達する可能性があると思っています。

 

だから、人々に音楽をやる喜び、作曲をする楽しみを知ってもらって、自分の新たな可能性を広げてもらいたい。

 

そして、多様な知識や感性を身につけて、ユニークな人になってもらいたい。

 

そういう、教育的な思考でやっているのが「おとやガイド」です。

 

たとえば、作曲とは言語学習です。

 

曲をつくる際は、言語表現と同じように、文法・論理・修辞法という、言語運用に重要な三要素を踏まえた上で、

 

人に伝わりやすい、楽しませやすい表現をすることが重要です。

 

特に、作曲における「論理」は重要で、一定のルールに基づいて楽想を進めることが求められます。

 

音楽でいう論理とは、例えばAメロの後にBメロがきてサビに向かうとか、ハ長調なら曲尾はハ長調のトニックの和音で終わるとかいうことが言えます。「メロディを人に伝えるための一定の規則」です。

 

しかし、音楽は「感性」でやるものだから、論理とかルールなんてものはまったく構わないものである、という誤解は非常に強く、

 

理論や形式論といったことはいつも毛嫌いされてしまっています。

 

しかし、音楽は言語であり、数学なのです。

 

もとより感性が意識されなくとも発揮されるものであるからこそ、論理やフォームを使って整えることで、カオス状態からメロディを救うことができ、結果、多くの人の心に響くすばらしい楽曲が生まれるのです。

 

「論理エンジン」で有名な出口汪先生は、「論理のない言語表現は赤ん坊の鳴き声と同じ」とおっしゃっていますが、

 

論理のない音楽などまさに赤ん坊の叫びと同じ、それはノイズでしかないのです。

 

「人間同士は生きてきた文脈も経験もまったく異なるのだから、論理という最低限のルールを守らなければ、コミュニケーションは成り立たない。論理という大切なものが見過ごされてきたせいで、いま日本は危機に瀕している」ということ趣旨のことが、出口先生の著書『日本語の練習問題』などでよく書かれています。

 

「いや、アートだから」「考えるより感じるのが大事だから」「感覚の問題」という方もいるでしょう。

それも、一人で楽しんでいる分にはいいのです。どんどんやってください。

 

しかしそれを人に押し付けて「熱い思いは伝わったはず」とか言ったり、「買って」とかやったら、相手にとってはたまったもんじゃないでしょう。誰が買うか!です。

 

そういう人がきちんとルールを守って、きちんとした「おとや」になるために、ガイドが必要なのです。

 

コアなファンがいるなら別として、誰もあなたに興味がない段階では、伝えるためのルールを使わない限り、誰もあなたの曲を欲しいとは思いません。

 

そういうバンドマンの必死な「CD買って」アピールほどうっとうしいものはないということを、わたしたちおよび当事者たちは自覚しなければなりません。

 

意味のわからない変なものを好きな方もたまにいますが、どんな変人も、社会の一部である以上、最低限論理を介さなくては、言葉が通じません。論理は絶対に必要です。

 

日本人に欠けている論理的思考を、音楽という感性に直接的な体験を通して溶け込ませることで、鍛えることができるのではないかと思っています。

 

別に音楽を使わなくても学習できることですが、音楽を使ってもできるのです。しかも体感を通して、楽しく。

 

どうせなら、楽しくやりましょう。

 

その上で、本格的にバンド活動をはじめたり、音楽活動で社会に影響を与えたいという人のために、

 

マネジメント的な情報も公開しています。

 

それによって、人とのコミュニケーションも豊かにできると思っています。

 

まとめ

「おとやガイド」の定義

 

・おとやガイドは、自身の能力開発・知的成長のために、音楽を楽しむ情報・作曲方法を提供する

・自分の音楽を追求する上で他者(社会)との関係性が拡大する場合、自立するためのマネジメント方法を提供する

 

です。

 

これを理念として情報を取材し、編集して提供しています。

 

実はわたしがよく参照している海外サイトも、教育的な目的で運営されていることがほとんどです。「メジャーデビューしよう」「音楽で食おう」なんてコピーを全面に出しているところはあまり見かけません。

 

それだけ、音楽が解放されているということです。

 

日本では音楽は「一部の人の特権」「才能がある人のもの」という意識が強い。それは間違いです。

音楽をやることで、確実に人間的に成長できる。単なる娯楽を越えて、自己成長に利用できるのが音楽です。

 

もっと一般教養的に、人々が作曲をできるくらいの論理力と感性があると、社会はもっと楽しくなるのではないでしょうか。

 

ちいさなおんがくニュースレター【おとやガイド】
ゲームの音楽・コード理論・おとやのしごと情報
http://tinyurl.com/lso5ey3


2014年あたるバンドのコンセプト


YOAKE MUSIC SCEANE 2014 レポート&スタディ 第12回 はじめます。

8回〜11回までは、オフレコ話が多いためメルマガ限定公開です。登壇者のみなさんがけっこう過激な話をするんですよね・・・ネットならまだよかろうものの、テレビじゃ完全にタブーな話ばかり。

トピックについて、はじめての方はこちらをどうぞ。
2014年のアーティストの販売方法-YOAKE MUSIC SCEANE 2014-

2013年11月25日に渋谷Quatroにて開催された音楽トークライブ
YOAKE MUSIC SEANE2014
主催:一般社団法人ミュージック・クリエイターズ・エージェント、OTOTOY, TOKYO BOOT UP!
特別協賛:京都精華大学

ディスカッション第二部「2014年のアーティストの販売方法」

登壇者は

加茂啓太郎
ユニバーサル・ミュージック合同会社
ウルフルズ、氣志團、相対性理論、ベースボールベアーなどを発掘

渡辺淳之介
アイドルグループ BiS マネージャー

高瀬裕章
アイドルグループ でんぱ組.inc マネージャー

劔樹人
神聖かまってちゃん マネージャー
バンド あらかじめ決められた恋人たち (Bass)
バンド ミドリ の元メンバー

今回はまとめです。

1.アイドルとCDの奇妙な関係

アイドル業界におけるCDの役割を、アイドル本人/ファン/アイドルビジネスの仕掛人の三方の目線から考察しました。
主に活動モチベーションとコミュニケーションと収益化の手段として、CDというツールがいかにキーとなる
か、そのえげつない手法のカラクリを解き明かしました。

2.あいつも売れて変わってしまった・・・

ある新しいジャンルや文化は、台頭期が過ぎ成熟すると、やがて権威化し退屈なコンテンツばかりになる、という話をしました。
ロックバンドというカテゴリがすでに権威化してしまったのに対し、
地下から這い上がってきたアイドルはまだストリートカルチャーとしてゲリラ的な雰囲気を保ち、
権威化していないため、制約も少なくタブーに挑戦でき、おもしろいコンテンツを発信していくことができる。こんな考察をしました。

文化の権威化という現象は、現在いろいろなところで起きていることなので、しっかり押さえておきましょう。
バンド、ゲーム、ファッション、ジャンプ漫画など、硬直していると思われる分野はどこかに権威化による錆び付きが発生していると考えられます。それをどうすれば打開できるのか、考え続けることが大切です。

3.永遠の命/余命一年

いま全盛期のアイドルブームは、じっさいいつまで続くのか?
登壇者の間で「終わらない」と「一年以内に終わる」とまっ二つに意見が分かれました。
それぞれ視点は異なりますが、結局は双方「実力がある個人だけが生き残る」という結論でまとまりました。

4.アイドル商法はバンドに応用できるのか

アイドル活動を参考に、アイドル的商売からバンド経営・音楽活動黒字化に適用できることは何なのか探りました。
具体的には、
・コミュニケーションを大事にする
・クラウドファンディングを活用する
・無駄をへらす
・キャッシュポイントをつくる工夫をする

などをあげました。
第2回でとりあげた、BLUE NOTE RECORDS CEOのドン・ウォズの言葉
「クソなレコードをつくらないことだな!」
と合わせて意識していきたいことですね。

この点に関しては、アイドルはクソなレコードをつくりまくっていると言えなくもないので、参考にできるかどうかは微妙だと思います。CDはビックリマンチョコじゃないですからね・・・

さて、第2部も第1部と同様盛りだくさんの内容でした。

これらの考察から、2014年に当たる可能性のあるバンドの要素を記号的にあげるとするならば・・・

・機材費がかからない
・情報発信メディア(Facebook,Blog,メルマガ)を活用しファンとのコミュニケーションを大切にする
・タブーや常識をやぶっていく(CDはつくらない,音源を無料で配信する)
・権威化した既存のロックバンド的なスタイルを崩す(ポストロックなど、もはやロックとは思えないような新しいスタイル)
・ルックスがいい(or仮面/覆面)
・フットワークがいい(組織に依存しない)
・メンバー独自の専門性のあるコンテンツ/グッズ/サービスを提供している

などがあります。こういったコンセプトから帰納的に導きだされるバンドのコンセプトは・・・

「タブーに挑戦し、コミュニケーションを大切にしてメディアを活用し、
権威的なロックバンドの枠にはまらないスタイルの、
独立した(事務所などに所属しない)、
かつメンバーがスペシャリティを発揮しているコンテンツ販売も兼業している、
ソフトビジュアル系な覆面アコースティック・ユニット/トリオ」

となります。

このままじゃわけがわからないですが、別にぜんぶの条件を満たさなくてもいいので、自分が譲れない部分だけは守って、後は変えていったらいいと思います。

機材費がかからない、フットワークが軽いという意味で少人数編成のアコースティックバンドですね。
最近では Sour なんかが良い例だと思います。
フル装備でライヴする時はふつうのバンドと同じくらい機材費かかってそうですが、基本的にウッドベース・アコギ・ドラム(リズム)だけで成立するので、小回りがききます。じっさい銭湯でライヴとかユニークなこともやってます。
シンプルな編成だから、何にでも合わせやすくコラボレーションもしやすいですからね。
これなどはすごく楽しいです。

ライヴだけいつもアコースティックアレンジでやる、とかでもいいと思います。

これらの条件をかっちり満たしているバンドが存在します。そうです、SONALIOさんです。いつも応援しているFrekul運営メンバーのバンドです。

アコースティックバンドではないですが、それ以外の条件はほとんど満たしているのがスゴイです。

独立して自分たちで会社を立ち上げて運営していますし、
音源は無料で配信するという、常識を打ち破る挑戦もしています。
メールマガジンも配信していますし、最近ではドラムの海保さんがYoutubeでドラムレッスンを開始しました。

http://www.youtube.com/user/DrumLessonOnline?feature=watch

メディアもフル活用していますね。
また、メンバーがそれぞれデザイナーであったり、
料理家であったり、音楽制作のプロであったり、映像作家であったり起業家であったりと、得意分野での専門性を発揮していて、それらをきちんとコンテンツ化してサービスに還元しています。オリジナルデザインのバッジや壁紙などがそうです。
バンド性にしても、いわゆるロケンローベイベとか愛してるウォウオ〜とかいう雰囲気じゃなく、少し抽象的で美しい超世俗的な幻想音楽という感じで、既存のロックバンドとは一線を画しています。

あと、ルックスがいいです。全員カッコイイお兄さんたちです。これまじ。だから覆面は無しでOKです。

このように、すでに活躍している例もありますので、行き詰まっている方、停滞している方、これからバンドつくろうと思っている方は参考にしてみてください。

では、以上で全12回にわたってお送りしてきたYOAKE MUSIC SCEANE 2014 レポート&スタディ を終了します。

一部はオフレコ話多数のためメルマガ読者限定公開となっています。完全版を希望の方は無料でご登録を。
次回からは、

2013年12月9日に開催されたFrekul主催のトークライヴ
アーティストがCD販売に依存せずに生計を立てる新しい方法を探る
「Frekul Talk Live vol.1」

から得た情報をもとに考察していきたいと思っています。お楽しみに。