2014年のアーティストの販売方法-YOAKE MUSIC SCEANE 2014-


2013年11月25日に渋谷Quatroにて開催された音楽トークライブ
YOAKE MUSIC SCEANE 2014
主催:一般社団法人ミュージック・クリエイターズ・エージェント、OTOTOY, TOKYO BOOT UP!
特別協賛:京都精華大学
Create Your World!

このイベントのレポート&スタディをやっています。

前回までは、第一部「すぐ外側から見る音楽シーンの未来」について解説していきました。

第7回の今回からは

ディスカッション第二部2014年のアーティストの販売方法

にて得た情報をもとに、2014年の音楽活動方法をみていきます。

登壇者は

加茂啓太郎
ユニバーサル・ミュージック合同会社
ウルフルズ、氣志團、相対性理論、ベースボールベアーなどを発掘

渡辺淳之介
アイドルグループ BiS マネージャー

高瀬裕章
アイドルグループ でんぱ組.inc マネージャー

劔樹人
神聖かまってちゃん マネージャー
バンド あらかじめ決められた恋人たち (Bass)
バンド ミドリ の元メンバー

です。これも4人による対談形式で、司会の飯田仁一郎(OTOTOY編集長)さんによる質問に4人が答える形で進みました。

全体像から話すと、実は「いまバブル最盛期であるアイドルビジネスから学ぶ」2014年のアーティストの販売方法だったんですね。

それもそのはず、登壇者の4人は全員がアイドルをプロデュース・マネジメントするプロである音楽人なのです。

彼らは明確にビジネスとしてアイドルグループをプロデュースし、運営しています。

この日も、対談の合間に「BELLRING 少女ハート」通称「ベルハー」のライブがあり、このイベントのコンセプトは実は「アイドル」だったことがわかります。

なぜ、低迷を続ける音楽業界にあって、アイドルは売れ続けるのか。アイドルビジネスのカラクリとは?

ということを紐解いていきます。そして、ではそのカラクリを知った上で、実際にアイドル以外の音楽、つまりバンドやらソングライターアーティストやらを

売って健全に運営していくにはどうすればよいのか。アイドルのやり方から取り入れられることはあるのか?などということが議論されました。

詳しいことは次回から見ていきますが、結論を先にいっておくと、重要なポイントは以下の点です。

アイドルはなぜ売れるかというと・・・

・価格設定が絶妙
・アイドルの音楽というよりは、人・場・コミュニケーションに付加価値がある
・ライヴ感が強い
・制約が少ない(フットワークが軽い)
・コストが少ない(機材費などが少なくライブでの利益率が高い)
・アイドルはまだ権威化していない
・社会現象を起こしやすい(ビジネスを仕掛けやすい)

バンドがなぜ苦しいかというと・・・

・モテない(ルックスの問題)
・機材費が高すぎる
・ロックはすでに権威化してしまった
・バンドに面白みがなくなった
・社会現象としてのバンドが生まれにくくなった(ビジネスが仕掛けにくい)

さらに、リアルな話・・・

・アイドルブームはいつまで続くのか?
・来年以降、流行る可能性のあるバンドのコンセプトは〇〇バンドである

などがあります。


YOAKE MUSIC SCENE 2014 レポート&スタディ 総括


YOAKE MUSIC SCENE 2014 レポート&スタディ第6回。今回は

ディスカッション第一部「すぐ外側から見る音楽シーンの未来」
・・・WITH
椎野秀聰(しいのひでさと)
ESP,Vestax創業者

若林恵
雑誌『WIRED』編集長

竹中直純
OTOTOY代表

の、まとめです。重要な情報が含まれていますのでぜひ参考にしてください。

1. 新メディア×開拓者=革新

あるジャンルの低迷を救うのは、新しいメディア・技術の普及と、それを使いこなす天才の登場によるものだという話をしました。

現代では、そのようなムーブメントは起きにくいので、新技術開発や一部の天才に頼る思考は捨て、新しい発想をする必要がある、ということがわかりました。

2. ModificationとBasic Technology

創作や技術開発における、Modification(修正・変更)とBasic Technology(基幹技術)の考え方をみていきました。

完全なオリジナルはあり得ないということを理解したうえで、オリジナルでなくてもよいがネイティヴであれという教えを得ました。

BLUE NOTE RECORDS CEOのドン・ウォズの言葉が印象的でしたね。

これからの音楽活動で大事なことは

・無駄なものを排除して、経営をスマートにしろ
・音楽で大もうけできる時代は終わった。もう一発当てる必要はない。ふつうにくらせるだけ稼げればいい
・クソなレコードをつくらない!!

です。

3. これからの音楽は”United”だ!

現代まできて、変化した音楽の在り方、作り方の姿を明らかにしていきました。

ひとり部屋にひきこもってシコシコつくるよりは、多様なジャンルの人たちとの関わりやコラボレーション、

コミュニケーションの中で一体的に音楽が生まれていくようになる、そのポテンシャルが異常に高まってきたということがわかりました。

誰がつくったとか誰がパクったとか、格付け批評や著作権闘争とかやるまえに、音楽をみんなで楽しめるにはどうすればいいか考えようZE!

という思考の流れが見えましたね。

4. 歴史的考察からみる音楽の現状と未来

歴史的、未来学的にみたら、まだまだ文化としての音楽は若いということ、まだまだ無限の可能性があるということがわかりました。

「21世紀は、金(大資本)、組織、グローバル化に頼ったやつはもれなく死ぬ」という警告と、

これからは間違いなく、徹底的にフォーカスされた「個」の時代である、ということが重要な点です。

5. 成熟した社会はアートを育てる

人間社会は物質的に豊かになりすぎても、それは真の意味で幸福を生むことにはならず、逆に生きる意味の欠乏を見いだす。

そのことから、成熟した社会はアートを育てる傾向が自然であるということを説明しました。

日本は官僚社会がすっかり国を腐らせてしまったので、力を注ぐ対象が若者やアートではなく老人や利権になっており、

さいあく国が滅びるんじゃないかという危惧がありますが、世界の流れは積極的に若いアーティストを育てる方向にシフトしているのが

明らかです。ただ、日本もまだまだ希望はあり、大企業や国がアート支援に取り組んでいる例をいくつかあげました。

それが、ー地方で革命を起こす作曲家ー多胡邦夫さん

と、Red Bull Music Academy Tokyo 2014
http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/red-bull-music-academy-tokyo-2014

です。

以上です。総括すると、すべてのテーマは「作品としての音楽と、人同士のコミュニケーションの一体化」という言葉でまとめられますね。

これからの音楽活動は、いかにコミュニケーションを付加価値としてつけられるかどうかが重要になってくるのです。作品のみのクオリティで争い続ける時代は終わりました。

ファンとの双方向の深い関係性を築き、人生単位で協力して、この腐敗し続ける世界を生き抜いていくことが大切です。一人でがんばっていても死にます。

かなり大量の情報がありますが、これを知っているのと知らないのとでは、これからの活動に雲泥の差がでます。

非公開の第4回、およびより詳しい内容はメルマガで公開しています。

知っているだけで、周囲より飛び抜けることができます。ぜひ活用してください。

次回からは第2部「2014年のアーティストの販売方法」について見ていきますのでお楽しみに。


物質的豊かさは生きる意味の欠乏を生んだ


YOAKE MUSIC SEANE 2014 レポート&スタディ 第5回 はじめます。

第4回はややクローズドな内容なので、メルマガ限定配信です。気になる方はこちらへどうぞ。

トピックについて、はじめての方はこちら。

楽器業界の革命家・椎野秀聰

今日のテーマは

成熟した社会はアートを育てる

です。実例を交えながら、社会が積極的にアート支援をすることの重要性を説明いたします。

一般に、アーティストや音楽人といわれる人々は、日本においては「何をやっているのかわからない」と思われていることが多いです。

つまり、社会に貢献しているのか、という部分が不明であり、そこがブラックボックスである限り、ふつうの人はアート属性の人たちを敬遠する、または自分とは別次元の関係ない人たちだと思うことが多いようです。

クリエイティブプロダクトやアート作品というのは、それがどんなに斬新であったとしても、認められないとはじまらないのです。

ベートーヴェンは死後50 年たってからやっと認められましたし、ピカソは生きている間は一枚も絵が売れなかった。モーツァルトは極貧のうちに死に、

ヘンリー・ダーガーは一生貧乏な掃除夫ですごして孤独死、絵を描いていることさえ知られていなかった。石川啄木なんか・・・もう言葉にできないほど凄惨な人生でしたね。

社会が作品と作者の価値を認めるには、時間がかかるのです。それか、作者や作品が新しい間は、それがいかにクリエイティブなものであっても(むしろそうであるほど)

絶対に認めない。とりあえず死ぬまでまつか、意図的に社会から抹殺する。それが社会の性質というものです。

なぜクリエイティブが社会に認められないのかというと、わかりやすくお金に換算できないからです。

ファクトベースの価値にしたら、印刷代とかパッケージ代ぐらいなもの。何がその価値かというと、完全に「情報的」なものなんです。

背景にどんなストーリーがあるのか、作者の信念は何か、生き様はどうか、どんな哲学を持っているか、というところが価値を高めます。

もちろん、技術的に優れているとか、構造が完成されているとかいう部分も大事な評価基準ですが、実はそれは周縁の要素です。

完璧な演奏や黄金比率なんてものは機械には絶対に勝てないわけですし、スキルベースではいくらでも競争相手がいるので、そこではたいして価値は発生しません。

プロよりうまいアマチュアミュージシャンなんていくらでもいますよね?でも、彼らが売れているかと言えばそうでないのは、そういう理由があるからです。マインドの問題です。

岡本太朗や村上隆さんの作品がぜんぜん意味不明でヘタクソでも一億で売れたりするのは、彼らの発言や精神に価値があるからです。作品はその人生の副産物でしかありません。

そもそもアートというのはお金に換算できないもの。今の社会は、何でもお金に換算しようとするから、アートは死ぬことになりました。

とくに日本はビジネスと文化をまるきり区別してしまう傾向があるので、両者相容れぬ関係になっています。

ビジネス人はアートなど儲からぬことをするヤツらなど理解できないし、軽蔑する。

アーティストはそれよりも強く、金稼ぎをするヤツらを徹底的に嫌悪し蔑み憎み遠ざけ見てみぬふりをする。

そんな現状があります。

ですが、同時に、積極的にアートを育てる社会も存在します。アートが適切な事業関係を結び、経済と文化を融和させ、社会に貢献している例です。

フランスやスウェーデンなどは、積極的に国や企業がお金を出してクリエイターを育てています。

古代ローマやギリシャでは、肉体労働をドレイに任せてやることのなくなった貴族たちが、

哲学や文学芸術の世界を開いていきました。

「成熟した社会は生きる意味の欠乏を生んだ」と言われるほど、社会は成熟と安定を迎えると、

哲学や芸術といったお金に換算できない価値の追求に向かうのが自然なのです。

いま、日本で求められているのはまさにこれです。

いいかげん何でもお金で価値を換算するのをやめて、もっと本質的な、大事なものを追求していく方向に向かわねばなりません。

これだけ豊かなのだから、クリエイターを支援する活動に踏み出さないと、どんどん社会が暗くなります。

以前、高崎市に市営のスタジオをつくった多胡邦夫さんのことを紹介しましたが、

こういう動きこそまさに希望です。

また、来年はRed Bull Music Academyが東京で開催されます。
Red Bull Music Academy

これは世界的に有名なイベントで、レッドブルという大企業がアート支援の一環としてやっているものです。

これだけでかくなった会社は、資本力を生かしてこのような活動をするのが当たり前になっていくのがこれからの時代なのです。

日本は成熟しすぎました。しかしそれはあくまで物質面で、です。これからは、国や大企業は積極的に、まだ未熟なアート産業やクリエイター業界の育成に

力を入れることが、生存の道となります。でないと、どんどん腐っていきます。すでに腐り始めていますがね・・・

これは、わたしたち一人一人に言えることです。社会を構成しているのは私たちひとりひとりなのですから。お金で換算できない価値を考えてみましょう。

興味がある方は、Red Bull Music Academyに挑戦してみてはいかがでしょうか。

詳細は近日発表のようなので、日々HPをチェックしましょう。

おわり。