おとやガイドの方向性


 

【「おとやガイド」は教育的な立場から発信している】

 

わたしは音楽活動(主に作曲)をしていて、人々にも作曲を教えようとしていますが、

 

日本の多くのレッスンやスクールで言っているように、

 

「音楽で食おう!」

「メジャーデビューを目指して」

「夢を実現」

「あこがれのミュージシャンと同じステージへ」

 

などというメッセージは一切出していません。

 

なぜなら、このようなスクールとは目指すものが異なるからです。

 

ですので、上記のようなことを実現するための詳細な情報は、わたしからは得られないと思ってくれた方がいいです。

 

わたしの提供する知識は、むしろ上記の方向性とは逆に進む上で役に立つことが多いです。

 

すなわち

・メジャーデビューは目指さない

・音楽だけで食おうとしない

・あこがれのミュージシャンと同じステージに立たない

 

ということです。

 

なぜなら、「おとやガイド」の目的は、音楽をやる人たちをそういう限定的な目的にフォーカスさせることではないからです。

 

音楽をやること、とくに作曲という知的営みは、思考力や感性を楽しみながら高めることになる、総合的な能力開発のツールとして発達する可能性があると思っています。

 

だから、人々に音楽をやる喜び、作曲をする楽しみを知ってもらって、自分の新たな可能性を広げてもらいたい。

 

そして、多様な知識や感性を身につけて、ユニークな人になってもらいたい。

 

そういう、教育的な思考でやっているのが「おとやガイド」です。

 

たとえば、作曲とは言語学習です。

 

曲をつくる際は、言語表現と同じように、文法・論理・修辞法という、言語運用に重要な三要素を踏まえた上で、

 

人に伝わりやすい、楽しませやすい表現をすることが重要です。

 

特に、作曲における「論理」は重要で、一定のルールに基づいて楽想を進めることが求められます。

 

音楽でいう論理とは、例えばAメロの後にBメロがきてサビに向かうとか、ハ長調なら曲尾はハ長調のトニックの和音で終わるとかいうことが言えます。「メロディを人に伝えるための一定の規則」です。

 

しかし、音楽は「感性」でやるものだから、論理とかルールなんてものはまったく構わないものである、という誤解は非常に強く、

 

理論や形式論といったことはいつも毛嫌いされてしまっています。

 

しかし、音楽は言語であり、数学なのです。

 

もとより感性が意識されなくとも発揮されるものであるからこそ、論理やフォームを使って整えることで、カオス状態からメロディを救うことができ、結果、多くの人の心に響くすばらしい楽曲が生まれるのです。

 

「論理エンジン」で有名な出口汪先生は、「論理のない言語表現は赤ん坊の鳴き声と同じ」とおっしゃっていますが、

 

論理のない音楽などまさに赤ん坊の叫びと同じ、それはノイズでしかないのです。

 

「人間同士は生きてきた文脈も経験もまったく異なるのだから、論理という最低限のルールを守らなければ、コミュニケーションは成り立たない。論理という大切なものが見過ごされてきたせいで、いま日本は危機に瀕している」ということ趣旨のことが、出口先生の著書『日本語の練習問題』などでよく書かれています。

 

「いや、アートだから」「考えるより感じるのが大事だから」「感覚の問題」という方もいるでしょう。

それも、一人で楽しんでいる分にはいいのです。どんどんやってください。

 

しかしそれを人に押し付けて「熱い思いは伝わったはず」とか言ったり、「買って」とかやったら、相手にとってはたまったもんじゃないでしょう。誰が買うか!です。

 

そういう人がきちんとルールを守って、きちんとした「おとや」になるために、ガイドが必要なのです。

 

コアなファンがいるなら別として、誰もあなたに興味がない段階では、伝えるためのルールを使わない限り、誰もあなたの曲を欲しいとは思いません。

 

そういうバンドマンの必死な「CD買って」アピールほどうっとうしいものはないということを、わたしたちおよび当事者たちは自覚しなければなりません。

 

意味のわからない変なものを好きな方もたまにいますが、どんな変人も、社会の一部である以上、最低限論理を介さなくては、言葉が通じません。論理は絶対に必要です。

 

日本人に欠けている論理的思考を、音楽という感性に直接的な体験を通して溶け込ませることで、鍛えることができるのではないかと思っています。

 

別に音楽を使わなくても学習できることですが、音楽を使ってもできるのです。しかも体感を通して、楽しく。

 

どうせなら、楽しくやりましょう。

 

その上で、本格的にバンド活動をはじめたり、音楽活動で社会に影響を与えたいという人のために、

 

マネジメント的な情報も公開しています。

 

それによって、人とのコミュニケーションも豊かにできると思っています。

 

まとめ

「おとやガイド」の定義

 

・おとやガイドは、自身の能力開発・知的成長のために、音楽を楽しむ情報・作曲方法を提供する

・自分の音楽を追求する上で他者(社会)との関係性が拡大する場合、自立するためのマネジメント方法を提供する

 

です。

 

これを理念として情報を取材し、編集して提供しています。

 

実はわたしがよく参照している海外サイトも、教育的な目的で運営されていることがほとんどです。「メジャーデビューしよう」「音楽で食おう」なんてコピーを全面に出しているところはあまり見かけません。

 

それだけ、音楽が解放されているということです。

 

日本では音楽は「一部の人の特権」「才能がある人のもの」という意識が強い。それは間違いです。

音楽をやることで、確実に人間的に成長できる。単なる娯楽を越えて、自己成長に利用できるのが音楽です。

 

もっと一般教養的に、人々が作曲をできるくらいの論理力と感性があると、社会はもっと楽しくなるのではないでしょうか。

 

ちいさなおんがくニュースレター【おとやガイド】
ゲームの音楽・コード理論・おとやのしごと情報
http://tinyurl.com/lso5ey3


ミュージシャンの起業と融資


引き続き、2013年11月16日に開催されたTOKYO BOOTUP Conference Dayの内容公開です。

今日は

インディーズミュージシャンの起業と融資

です。講師は若い税理士の方でした。

インディーズミュージシャンと、「起業」「融資」という言葉は、なかなか結びつきにくいですよね。

でも、ミュージシャンだってアーティストだって、事業モデルをプレゼンすれば、融資をしてくれる可能性はあります。

わたしが予想していたセミナーの内容は、

「ミュージシャンとしての経験やスキルを活かして、何かエンターテイメント系の事業を起こしませんか」

ということでした。つまり、ミュージシャン本人が、たとえばイベント業者やフェスのオーガナイザー、プロデューサー、

エンジニア、音楽SNS管理者、音楽アプリ制作者、音楽講師などとして個人事業でもスモールビジネスでもはじめて、それぞれの個性を活かしたサービスを展開するようになれば、

業界が活性化していくのではないか、というようなことでした。実際、そのような動きがいたるところで起きてますしね。

しかし、実際の内容は、

「バンドをビジネスとして成り立たせよう」

という、超ダイレクトなものでした。

つまり、ふつうにバンド活動やライブ活動をして、音源販売やライブ・グッズの収益で音楽活動をまわしつづけること自体を、中小企業活動として法人化してビジネスにするというアイデアです。

ふつう、ある程度影響力がついてきたら、スカウトでもオーディションでも通して事務所に所属し、運営やプロモーションを任せるのが今ままでのやり方でした。

それが、このやり方では音楽事務所やレーベルではなく、融資団体に自分を売り込むということです。

起業プレゼン・事業提案・創業計画書=オーディションなのです。

音楽活動だって収益が発生すれば事業とみなされますから、見込みのある事業だと判断されれば融資してくれるわけです。

なんという裏技!

でも、そんなのできるの?と思いますよね。次のような疑問が浮かびます。

・本当にミュージシャンの音楽活動そのものに融資してくれる団体があるのか
・もし返せなかったらどうなるのか

などです。

これに関しても、システム自体は整っていて、できない理由がないんです。

まず、紹介されていた融資団体は「日本政策金融公庫(JFC)」・・・なんと国の団体です。

国による公的な支援ですから、若い人や実績のない人でも応援してくれる、ふつうの起業家にとってもありがたい制度です。

国の事業ローンが、反体制を歌うロックミュージシャンに融資なんてするのか?と思いきや・・・

なんと、「JFCもビジネスだから、お金を貸したいのが本音。とくにアーティスト系の活動への融資は事例がないし、起業相談自体がない。

新しい取引相手としてアーティスト系の活動が注目されている」

というのです。

丁寧なことに、創業計画書を書く際のポイントまで教えてくれました。

・CDを手売りしたなど、地道な音楽活動をしていたことをアピールしてはいけない

これは、がんばって売り上げを出していることをアピールしてはいけないのは変だと思いますが、これはダメなんです。なぜなら、手売りのようなルーズな収益活動は、

「申告していない」と判断される可能性があるから、マイナスポイントになるのです。

・創業資金は「親や友人に借りました。毎月ー万ずつ返します。」もダメ

親や身内などから資金を借りて、毎月返していく計画です・・・まじめそうで、安全そうで、いいんじゃないの?と思われそうですが、これもダメです。

なぜなら、「自己資金じゃないじゃん」とみなされるからです。自己資金じゃないとダメらしいですね。

じゃあ、どのように書けばいいのかというと、「出世払いで返す」でいいんだそうです。驚きですね。

◇もし、返せなかったら・・・

さて、もしバンドがうまくいかずに返せなかったらどうなるのか。

取り立て?

訴訟?

どんなこわいことがおこるのか・・・

気になりますよね。その恐怖がネックとなり、起業ができません。

税理士の方はいいます。

「ちゃんと申告すれば大丈夫です。」

つまり「返せません」と言えばいいらしいです(!)

なんと、返済がきつかったらその都度きちんと申告をすれば、「仕方ないね」ですむそうです。

しかし、返さなくていいわけではありません。返済を「延期」する措置をとり、これが最長で7年まで可能だそうです。

国の団体だから、そんなに強引な取り立てはできない、というわけですね。

そして、彼らが欲しいのはカネではなくて、自分と周囲を納得させるだけの「理屈」だそうです。

つまり、焦げ付いたらならそれなりの「理由」を提示しないと、自分たちの責任が問われるので、いやだと。

だから、逃げ場となる正当な「理由」がほしい。それを明確に提示してやれば、「わかりました」といってスムーズに通るといいます。

あきらかに、「こりゃ無理だ。返せない」となるようなまっとうな理由をこちらから提示すればいいのです。

それも、自然災害とか病気とかの強烈な外部要因が必要なわけではなく、

「一生懸命やったけど、だめでした」みたいな感じで、「しょうがないね」と思われるような理由であればいいそうです。

すごい国ですね、日本は。

そんな可能性もあるわけです。

ただ、いままでにアーティスト系の方々が実際にJFCの融資を受けた事例がない。だから、お互いよくわからないところが多く、不安であると。

だから、税理士の方も、一緒に成長していきたいと思っている、応援したい、と言っていました。

ただ、肝心のミュージシャンは、会場にあまりいませんでした・・・

今日は以上です。

音楽活動の新たな側面が見えたと思います。やろうと思えば受けられるんですよ、融資。

ただ、本質的に、アート活動をビジネスモデルとしてシステム化するのは、どこかでひずみがでるだろうなと、ぼくは思っちゃいますね。

それこそ完全に商業的モデルに特化しないと、成立しないでしょう。

融資する人は「パトロン」ではなく、あくまでリターンのあるビジネスとしてやるわけですからね。

実際にJFCから融資を受ける人はいるのでしょうか。

「おれやる!」という方は、ぜひ教えてくださいね。

おわり。

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ミュージシャンによる著作権管理事業団体ができればすごいビジネスになる


前回、JASRACの独禁法違反訴訟に対する東京高裁判決の実態についてお話しました。

今回は、

・JASRAC利用するにあたり、ミュージシャンが気をつけること
・ミュージシャンによる著作権管理事業団体ができれば、すごいビジネスになる

についてかんたんに話します。

◇JASRACはどう使うのか

JASRACはなにもミュージシャンの敵ではないということです。ツールとしてうまく使えばいいとのこと。

ここで重要なのが「支分権(Divisible Rights)」という概念です。

その名の通り、権利を分割したものです。例えば、ラジオで放送する権利、テレビで放送する権利、カラオケボックスで放送する権利、イベントで使用する権利、

歌詞を翻訳する権利など、制作物に関するあらゆる権利は、細かく分割して、一つ一つ管理するのです。

じつは、「著作権」というのは一つの絶対的な権利ではなく、この「支分権」の集合体と言えるのです。これらすべてをまとめて、

著作権です。

だから、とりあえず曲をつくったら、著作権はJASRACに預けることになっているんだったな・・・と安易な気持ちでJASRACに

「曲つくったんで、著作権あずけます」とくそまじめにあげちゃうと「え、ぜんぶくれちゃうの?ラッキー!」となっちゃいます。

こういう取引はとうぜん「知っていることが前提」で行われるので、あとで「支分権わけろ!」と言うのは不利というものです。

いつだって情報を多く持つものの方が立場が上です。

だから、あるていど商用利用されるような曲ができたら、

第一JASRAC・・・放送局、カラオケボックスなど規模が大きく、自己管理できない支分権
第二JASRAC・・・小規模イベント、ラジオ、ローカル映画などの支分権
自己管理・・・ある特定の業者、企業・セミナーへの提供、個人事業でとりまとめられる範囲の契約に関しては、自分で管理・交渉・取引をする

というふうに、分ける必要があるのです。

決して、調べるのがめんどうだからといって、著作権すべてをJASRACに丸投げしてはいけません。理不尽なほど管理手数料をとられたり、

個人的な活動範囲にまで介入してきて、身動きがとれなくなります。

◇ミュージシャンが組合をつくって、音楽著作権管理事業を興せ!

あまりに巨大すぎて融通の利かないJASRAC、期待されはしたものの思うほど機能していないe-License・・・

トラブルの多い音楽著作権管理事業をもっとうまくまわすにはどうしたいいのかという点について、弁護士の小倉秀夫さんは言いました。

「ミュージシャンが自分たちでやればいいのに」

と。

つまり、ミュージシャンによる、ミュージシャンのための音楽著作権管理団体をつくったらどうか、という提案でした。

「そんなに文句あんなら自分たちでやれや」ということですね。

これって、盲点でしたね。

「著作権管理はJASRACがやるもの」という固定概念が浸透してしまっているので、この発想は出てきませんでした。

しかし、管理事業だってビジネスですから、ほかの団体が参入していいわけです。

現在は、事実上JASRACの独占が続いてしまっているから、独占状態を崩し、健全な市場環境をつくれるような、

新しい管理事業組合が求められているのです。そういう意味でe-Licenseは期待されていたのですが、いかんせんうまくいっていないようです。

だったら、もうミュージシャン自身がやればいいじゃないか!という話です。

管理事業を起こすにも、手順を踏めばかんたんにできるそうです。ある程度の人数で組合をつくって、サーバーやWEBシステムをつくり、

業者と交渉する仕組みをつくるだけ。会社をつくるのと同じです。

やり方は、ただJASRACを排除するのではなくて、いいところは利用する。

たとえば、支分権ごとにしぼって管理すればいいのです。

JASRACのようにすべての権利にわたって大規模に管理しようとすると、コストがかかる上に、

地方の違法カラオケとかまで手数料を請求しにいかなければならなくなる。彼らは仕事熱心なのでそこまでやりたくてしょうがないのですが、

肝心のミュージシャンはそこまで徹底的に管理されることを望んでいるのか?「そこまでしなくていいよ!」ですよね。

だから、放送局など大規模な部分の管理はJASRACにまかせ、ラジオやインターネット(ニコ動)なんかの隙間の権利はおれたちでやるよ!というようなモデルをつくるのです。

そうすれば、大規模にやらなくてもいいから、コストも安くてすむ。自分が大切だと思う部分の権利だけあずけて、適切に作品が使用され、正当な対価が得られるようになる。

そういう仕組みを、ミュージシャン自身でつくっていくことが求められているのです。

そうです。ついに、ミュージシャンが作品の管理に関しても、権利団体に依存する時代が終わろうとしているのです。

ネットが解放されて、活動が自由になってきた音楽人たち。つぎは、著作権の管理まで自分たちでやるようになる、そんな時代に突入しているのです。

感慨深ですよね。虐げられてきた人間たちの復権というか。

問題は、それを実際にやる人がいるかどうか。

システムをつくって、業者と交渉するなんてことは、

ミュージシャンがいちばん苦手な部分ですからね。

ただ、例外もいると思います。そういうのが好きなミュージシャンってのも、やっぱりいるんですよ。ビジネスとエンターテイメントを同時に楽しめる人。

それか、ミュージシャンではないけど、音楽が好きで、そういう事業を代わりにやってあげようと思う専門家の人がやるかもしれません。

そういう人たちが必ずでてきて、何か行動を起こすと思います。

以上です。かなり可能性のある話をしました。