ミュージシャンによる著作権管理事業団体ができればすごいビジネスになる


前回、JASRACの独禁法違反訴訟に対する東京高裁判決の実態についてお話しました。

今回は、

・JASRAC利用するにあたり、ミュージシャンが気をつけること
・ミュージシャンによる著作権管理事業団体ができれば、すごいビジネスになる

についてかんたんに話します。

◇JASRACはどう使うのか

JASRACはなにもミュージシャンの敵ではないということです。ツールとしてうまく使えばいいとのこと。

ここで重要なのが「支分権(Divisible Rights)」という概念です。

その名の通り、権利を分割したものです。例えば、ラジオで放送する権利、テレビで放送する権利、カラオケボックスで放送する権利、イベントで使用する権利、

歌詞を翻訳する権利など、制作物に関するあらゆる権利は、細かく分割して、一つ一つ管理するのです。

じつは、「著作権」というのは一つの絶対的な権利ではなく、この「支分権」の集合体と言えるのです。これらすべてをまとめて、

著作権です。

だから、とりあえず曲をつくったら、著作権はJASRACに預けることになっているんだったな・・・と安易な気持ちでJASRACに

「曲つくったんで、著作権あずけます」とくそまじめにあげちゃうと「え、ぜんぶくれちゃうの?ラッキー!」となっちゃいます。

こういう取引はとうぜん「知っていることが前提」で行われるので、あとで「支分権わけろ!」と言うのは不利というものです。

いつだって情報を多く持つものの方が立場が上です。

だから、あるていど商用利用されるような曲ができたら、

第一JASRAC・・・放送局、カラオケボックスなど規模が大きく、自己管理できない支分権
第二JASRAC・・・小規模イベント、ラジオ、ローカル映画などの支分権
自己管理・・・ある特定の業者、企業・セミナーへの提供、個人事業でとりまとめられる範囲の契約に関しては、自分で管理・交渉・取引をする

というふうに、分ける必要があるのです。

決して、調べるのがめんどうだからといって、著作権すべてをJASRACに丸投げしてはいけません。理不尽なほど管理手数料をとられたり、

個人的な活動範囲にまで介入してきて、身動きがとれなくなります。

◇ミュージシャンが組合をつくって、音楽著作権管理事業を興せ!

あまりに巨大すぎて融通の利かないJASRAC、期待されはしたものの思うほど機能していないe-License・・・

トラブルの多い音楽著作権管理事業をもっとうまくまわすにはどうしたいいのかという点について、弁護士の小倉秀夫さんは言いました。

「ミュージシャンが自分たちでやればいいのに」

と。

つまり、ミュージシャンによる、ミュージシャンのための音楽著作権管理団体をつくったらどうか、という提案でした。

「そんなに文句あんなら自分たちでやれや」ということですね。

これって、盲点でしたね。

「著作権管理はJASRACがやるもの」という固定概念が浸透してしまっているので、この発想は出てきませんでした。

しかし、管理事業だってビジネスですから、ほかの団体が参入していいわけです。

現在は、事実上JASRACの独占が続いてしまっているから、独占状態を崩し、健全な市場環境をつくれるような、

新しい管理事業組合が求められているのです。そういう意味でe-Licenseは期待されていたのですが、いかんせんうまくいっていないようです。

だったら、もうミュージシャン自身がやればいいじゃないか!という話です。

管理事業を起こすにも、手順を踏めばかんたんにできるそうです。ある程度の人数で組合をつくって、サーバーやWEBシステムをつくり、

業者と交渉する仕組みをつくるだけ。会社をつくるのと同じです。

やり方は、ただJASRACを排除するのではなくて、いいところは利用する。

たとえば、支分権ごとにしぼって管理すればいいのです。

JASRACのようにすべての権利にわたって大規模に管理しようとすると、コストがかかる上に、

地方の違法カラオケとかまで手数料を請求しにいかなければならなくなる。彼らは仕事熱心なのでそこまでやりたくてしょうがないのですが、

肝心のミュージシャンはそこまで徹底的に管理されることを望んでいるのか?「そこまでしなくていいよ!」ですよね。

だから、放送局など大規模な部分の管理はJASRACにまかせ、ラジオやインターネット(ニコ動)なんかの隙間の権利はおれたちでやるよ!というようなモデルをつくるのです。

そうすれば、大規模にやらなくてもいいから、コストも安くてすむ。自分が大切だと思う部分の権利だけあずけて、適切に作品が使用され、正当な対価が得られるようになる。

そういう仕組みを、ミュージシャン自身でつくっていくことが求められているのです。

そうです。ついに、ミュージシャンが作品の管理に関しても、権利団体に依存する時代が終わろうとしているのです。

ネットが解放されて、活動が自由になってきた音楽人たち。つぎは、著作権の管理まで自分たちでやるようになる、そんな時代に突入しているのです。

感慨深ですよね。虐げられてきた人間たちの復権というか。

問題は、それを実際にやる人がいるかどうか。

システムをつくって、業者と交渉するなんてことは、

ミュージシャンがいちばん苦手な部分ですからね。

ただ、例外もいると思います。そういうのが好きなミュージシャンってのも、やっぱりいるんですよ。ビジネスとエンターテイメントを同時に楽しめる人。

それか、ミュージシャンではないけど、音楽が好きで、そういう事業を代わりにやってあげようと思う専門家の人がやるかもしれません。

そういう人たちが必ずでてきて、何か行動を起こすと思います。

以上です。かなり可能性のある話をしました。


JASRAC商法は独禁法違反なのか?


TOKYO BOOT UPで得た情報の公開です。

今日の話は大事なので、保存しておいてください。

セミナー参加者がお金を払って得られるはずの情報ではありますが、そんなにシークレットな会でもなかったですし、

隠してもいいはずがない問題なので、広がるほうがいいと思うのでいいます。

ちょっと堅い話かもしれませんが、あなたがもし音楽活動を行っているならば、知っておいた方がいいことです。

・JASRACは何をしている団体なのか?
・JASRACのやり方の何が問題なのか?

ということについて簡単に語ります。

まずはこちらをご覧ください。短いので1分で読めます。

2013/11/13
JASRAC、独禁法違反を否定した公取委審決「取消」判決を不服として上告

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20131113_623383.html

JARACについては、ぼくら音楽人にとってはなにかと悪いイメージが多いですね。爆風スランプのファンキー末吉さんも

「JASRACとの戦いの日々」をブログに綴っています。

しかし、細かい世間事情については疎い(詳しい方はすいません)アーティストタイプの人々、

じつはJASRACについても「何かうるさいヤツら」ぐらいの認識しかなくて、詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。

Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers
一般社団法人日本音楽著作権協会
略してJASRAC

◇JASRACは何をしている団体なのか

JASRACのしごとは、ミュージシャンの音楽著作権を一括管理することです。

たとえば、ある程度売れている歌手やグループは、放送局などメディアやカラオケボックスが自分の楽曲を使用する際、

楽曲使用の交渉、楽曲使用料の交渉などを、各メディアごとにいちいちやっていられないので、著作権をJASRACに委託します。

放送局は、直接ミュージシャンに楽曲使用契約を結ぶことなく、JASRACに定額(ここがポイントです)の使用料を払えば、登録されているミュージシャンの楽曲を使い放題できるというわけです。

そして、JASRACは使用料から管理手数料を引いた著作フィーを権利者であるミュージシャンに分配するという仕組みです。

関係を把握しましょう。

○楽曲の流れ
ミュージシャン(委託者)→JASRAC(受託者)→放送局(受益者)

¥お金の流れ
ミュージシャン←(管理手数料を引いた使用料)JASRAC←(楽曲使用料)放送局

となっています。

◇JASRACのやり方の何が問題なのか?

音楽業界、法曹会ではかなり話題になっている今回の「JASRAC独禁法違反訴訟、東京高裁判決」ですが、

皮肉なことに、当事者であるミュージシャンは関心がないようです。
会場でこの話を聞きにきていたのは、会場をみるかぎりわたしふくめ3人くらいでした。

裁判の具体的な内容は、リンクを見てほしいのですが、

要するに、

1.日本のほとんどの音楽著作権を一括管理し、手数料をたくさんとっているJASRACに対して、

公正取引委員会が「ちょっとやりすぎじゃあないかい?」といって「こりゃ独占禁止法違反ですよ」とジャッジし、

排除措置命令をとった。

2. JASRACが「独禁法違反してません」といって反発し、独禁法に違反していない訳を公正取引委員会に訴えかけた。

で、公正取引委員会は「ハイ、わかりました」といって、独禁法違反審決を取り消した。

3. このやりとりを見ていたe-License( JASRACと同様に音楽著作権管理の手数料ビジネスを行う団体、JASRACの存在によって競争が阻害されていると主張)が、

「ちょっとまってください。管理曲数もダントツ、使用量も定額でお得なJASRACさんが大人気すぎるので、

うちで管理している楽曲が使われなくて、商売ができません!」と、反論を投げかけ、公正取引委員会に対して

「JASRACに対する独禁法違反審決の取り消し、あれの撤回を求めます」と訴訟を仕掛けました。

e-Licenseも、JASRACと同じように音楽著作権管理事業を展開している団体ですが、JASRACとは違い、楽曲使用料が定額ではないのです。

だから、JASRACの、定額で楽曲使い放題という「包括契約」商法を争点として、e-Licenseが訴訟を起こしたわけです。

ちなみに、e-Licenseも包括契約を行って定額使用制度をつくれば、競争できるじゃん、とい疑問がありますが、そもそもe-LicenseはJASRACにくらべて圧倒的に管理楽曲が少ないので、

定額にすることによる利益面でのメリットがないため、それはできない、とある弁護士さんは言っています。

「独禁法違反審決の取り消し」の取り消しを求めるという構図なので、ちょっとややこしいですね。

この闘争を、次元を低くして、かわいく説明するとこういう感じです。

公正取引委員会「(*´3`) JASRACは儲け過ぎ。独禁法違反です」

JASRAC「( #・∀・)なん・・・だと・・・?」

公正取引委員会「(;・∀・) JASRACは独禁法してますって言ったけど、あれ、やっぱナシね!」

e-License「(*@_>@)つ 公取さん…それはないんじゃないかい?わたしたち、商売成り立ってないんですヨ」

公正取引委員会「(´;ω;`)・・・東京高等裁判所さん、どう思いますか?」

というやりとりです。で、その続きはというと、東京高裁がe-License側の進言を受け、

東京高裁「( ´_ゝ` ) 公正取引委員会はJASRACに対する『独禁法違反ジャッジメント、やっぱナシね!』発言を取り消しなさい」

公正取引委員会「(´・ω・)∩ 東京高裁さんにそういわれちゃ、仕方ないよね・・・わかりました」

JASRAC「(# ゚Д゚) なん・・・だと・・・?」

となり、JASRACは審決を不服とし、上告。この戦いの決着は最高裁判所での審決を待つことになる・・・

最高裁にまでもちこまれてしまい、裁判の決着がつくまでの時間はまったく未知数。いつまで長引くかわからない。

だから、
終わる頃には忘れられてそうですね。JASRACの事実上独占状態は問題だと思うので、ほんとうは目が離せないはずなんですが、あまりにも無関心な人が多い・・・・

はたしてe-LicenseはJASRACの牙城を崩すことができるのか?!

 

つづく・・・

以上が概要です。

ある弁護士さんの話によれば、彼らは仕事熱心なだけ、まじめすぎるだけなんだそうです。

昔、音楽著作権管理団体がJASRACひとつしかなかった時代から、ずーっと日本の音楽を徹底的に管理してきたから、その自負は相当つよい。

それが仕事ぶりにでて、かなり細かく使用料を徴収したりしようとして、まわりからみたらマイナスに見えることもあるというだけ。

システム自体は決して悪ではなく、著作者の権利をきちんと守るものでしょう。預ける預けないは自由ですが。

だから、官僚とかと同じように、「融通がきかない」とオコッたって無駄で、そういう性質なんだと理解して、感情的にならずに、そのシステムだけうまく使用すればいいのです。

著作権は支分権という、細かい権利の集合体の概念なので、楽曲の管理を何から何まで任せきりにしなくてもいいんです。

たとえば、ラジオやテレビなど大きなメディアで使用される際の権利はJASRACさんに管理をお願いするけど、小さいハコとか企業のプロモーションなどに関しては自分で管理・交渉・契約するんで、

そこは区別します、ということもできるわけです。
長くなりました。今日はここまでにしましょう。

いかがでしたか。JASRACという、何か得たいの知れないものの実態が、少しでも伝われば嬉しいです。

メルマガではもう少しつっこんで書いてます。

次回も、もう少しこの話が続きます。おつきあいください。

次のような内容を話そうと思います。

・ミュージシャンが気をつけるべきことは?
・ミュージシャンによる著作権管理事業団体ができれば、すごいビジネスになる

タイムリーなネタです。