新メディア×開拓者=革新


YOAKE MUSIC SCEAN 2014より得た情報をもとに、これからの音楽活動を考えてみます。

今日のテーマは

新メディア×開拓者=革新

です。

これは文化やエンターテイメント史上の現象を説明する一般法則のようなものです。

新メディアとは、その時代に開発された、影響力を持つ新しいメディア媒体・新技術などのことをいいます。

そして、開拓者とは、それを使って何かクリエイティブなコンテンツを生み出して世に爆発的に広め、新たな価値の提起と

ムーヴメントを起こし、革新を起こす人です。

これを音楽に当てはめると、例えば過去には次のような事例があります。

Jimi Hendrix × エレキギター
Arcade Fire × Pitchfolk
RUN-DMC × 白人ロック

などです。

ジミヘンとエレキギターというのはわかりやすいですよね。エレキギターという、すごい技術が登場したのはいいものの、
いまいちどうやって使えばいいかわからなかった時代に、ジミヘンという一人の天才があらわれて、
エレキギターのすごさ、ロックのすごさを決定づけ、ギターヒーローという生き方を提示した。

その後、フォロワーやまねをするギタリストが増え、エレキギター=ロックというイメージを植え付けたわけです。

Arcade Fire × Picthfolk

これはどういうことかというと、Pitchfolkという音楽メディアは、Arcade Fireをはじめて大々的に紹介し世に広めたことで

一気に有名になったのです。

Pitchfolkも元々は、趣味とボランティアで運営されているにすぎない音楽レビューメディアだったんですね。それが、当時まだ売れてなかった

Arcade Fireを「すごいヤツらがいる」と世に知らせてあげただけで、爆発したわけです。

では、RUN-DMC × 白人ロック の関係は?

RUN-DMCと言えば黒人のHipHopグループですが、彼らがエアロスミスの「Walk This Way」という曲をサンプリングした曲を発表するまでは、

HipHopはまだ芽のでないジャンルで、若者の娯楽や「黒人の遊び」ぐらいにしか思われていなかったのです。

それが、リック・ルービンというプロデューサーによって白人音楽のエアロスミスと融合されたことで、

全米に爆発的に広がり、HipHopを一気にメジャーなジャンルに変えたわけです。l

このように、時代ごとに新しいメディアやジャンルや技術はどんどん開発されていきますが、

それが一般に認知された背景には、それを巧みに利用して面白いことをするカリスマの登場があります。

新技術を自在にあやつるひとりの天才やパイオニアの登場によって、新しいジャンルの地位は確立されていくことが多いのです。

それが、いまの時代は、新しい技術やメディアはあふれていても、それを爆発的に広めるような開拓者があらわれにくくなっています。

新しそうにみえても、実は数十年前のやり方をちょっと変えたものだったりして、なかなか革新とまではいかない。

レディーガガのスタイルだって、革命的なように思えてじつは1920年代のモデルを援用したにすぎない、と言われています。

現代の例といえば、DTMや初音ミク、iPhoneアプリ、電子書籍などでしょう。

それらの技術を、当たり前の方法論や既成のカテゴリでなく、何か面白いアイデアで活用した人が、

革新者としてリーダーになる可能性があります。これからそんな人が出てくるでしょうし、すでに一部での成功事例もあると思いますが、

ほかには何があるでしょうか。

自分なら自由自在に操れる!という技術やメディアがあれば、それを追求し続け、何か面白い作品を提示するのがいいですが・・・

いまはなかなかそういうことが起きにくくなっている。

停滞した業界を刷新するための新たなムーブメントは、新しい技術とそれを活用する天才の登場を待っていては、

なかなかおこらない時代になってしまったんです。

その原因は、グローバル化やネット環境が整ったことにあると思います。

個人個人の活動が分割されすぎて、価値観が多様化し、市場も複雑化し、統一的なひとつのジャンルや技術でドカンと売ることは難しくなったのかもしれませんね。

あるコアなジャンルや技術の天才があらわれても、かつてのRUN-DMCのようには広がっていかず、マニアックな世界のみで完結してしまうのかもしれません。

では、これからの時代の音楽は、どういう風に変化していくのか。どんな革新が必要なのか。

技術やひとりの天才に頼らない、次の時代の音楽の在り方とは?

次回はそれをみていきます。


楽器界の革命家・椎野秀聰ーYOAKE MUSIC SEANE2014に登壇


今回からは
2013年11月25日に渋谷Quatroにて開催された
YOAKE MUSIC SEANE2014
主催:一般社団法人ミュージック・クリエイターズ・エージェント、OTOTOY, TOKYO BOOT UP!
特別協賛:京都精華大学

より得た情報から、2014年の音楽の在り方はとう変わるのかを考察していきます。

特殊な形式のイベントであり、かなりスゴイ人たちも集まったので、全体像から紹介します。

このイベントは、トーク&ライブという形式で行われました。

「すぐ外側から見る音楽シーンの未来」というテーマのディスカッションと
「2014年のアーティストの販売方法」というテーマのディスカッションの
二部構成で、間に

BELLRING少女ハート

というアイドルと

浜田真理子

さんというピアノ弾き語りの方のライブを挟む形で進行しました。

ディスカッションは、主催者側の司会者とゲスト数名による対談形式で進められました。

第一部「すぐ外側から見る音楽シーンの未来」

ゲストは

椎野秀聰(しいのひでさと)
ESP,Vestax創業者

若林恵
雑誌『WIRED』編集長

竹中直純
OTOTOY代表

第二部「2014年のアーティストの販売方法」

ゲスト

加茂啓太郎
ユニバーサル・ミュージック合同会社
ウルフルズ、氣志團、相対性理論、ベースボールベアーなどを発掘

渡辺淳之介
アイドルグループ BiS マネージャー

高瀬裕章
でんぱ組.inc マネージャー

劔樹人
神聖かまってちゃん マネージャー
あらかじめ決められた恋人たち (Bass)
ミドリ の元メンバー

です。

とくにすごいのは、椎野さんなので、紹介しておきます。

日本にレスポールを導入したのも、ESPをつくったのも、VestaxをつくってDJを開発し楽器が弾けない人にも

音楽を開放したのも、全てこの人です。こんにち、われわれがバンドをやったり、DJを楽しんだり、楽器を楽しむことができのは、

全てこの人のおかげです。それはもう、楽器業界では伝説というか神のような存在らしいです。

1968年YAMAHA入社、当時楽器がなくレコードを聴くだけで悶々としていた時代にレスポールEG360を紹介し、

日本にギターブームを起こした張本人。その後、楽器製作会社ESPを創業、人々がより音楽を楽しめるように、より多くの人に音楽を開放するために

楽器関係の多様な事業を展開。楽器の修復・リペアの基準を底上げするのに貢献。さらに、楽器が弾けないヤツにも音楽を開放するために、

Vestaxを創業しDJを開発、世界中にDJムーブメントを巻き起こす。人が音楽を楽しむことを助ける活動をし続けた数十年だったが、2000年代に入り

「もう音楽業界はだめだ」と失望し業界をはなれ(w)、一時祖父の事業を引き継ぎシルク製品製造業に携わるも、最近また楽器業界に復帰、

「儲けられるかどうかはどうでもいいけど」楽器商として活動を再会し、都内にギターの展示場や代理店を開き、多くのギターマニアの注目を集めている。

という、楽器界の革命家のような人です。

一度は音楽を見限った業界の偉人が、いまどんな思いで現在の音楽シーンをみているのか、貴重なお話を聞くことができました。

さすがは大御所というか、見方が違う。いまは業界の中心にいる人たちでさえ音楽コンテンツの未来はまったくみえてませんが、

椎野さんは自身の経験と歴史的な視点からみた現代の考察によって、これからの音楽の未来を予測してくれました。

かなり衝撃的な話もでてきましたね・・・

どんな話だったか、次回から公開していきます。


地方で革命を起こす作曲家


TOKYO BOOT UPカンファレンスで得た内容を公開しています。

今日のテーマは

「Glocal」「グローカル」地方から世界へ発信する音楽。

地方で革命を起こしているある作曲家の方を紹介します。

群馬県高崎市、多胡邦夫さん。

Every Little Thing,AKB48,浜崎あゆみさんなどに楽曲提供されていた作曲家です。

いまは出身地の高崎にもどり、ある壮大なプロジェクトを進めています。

「高崎市に市営の音楽スタジオを創設、ミュージシャンに格安で提供し、ミュージシャンを育て、世界に発信していくとともに、

高崎を日本が誇る、日本と世界をつなぐ音楽文化都市にする」

という計画です。

なんと、高崎市の市長と市議会によびかけて、市営の音楽スタジオをつくってしまいました。

http://www.city.takasaki.gunma.jp/soshiki/bunka/sisetu/tksound-gaiyo.htm

しかも、公共運営といっても安っぽいものではなく、多胡さん自身が全面的に設計をした、

「超本格プロ仕様のハイテクスタジオ」です。二階構造、天井3.5m、巨大ミキサー・フルコン(オーケストラで使用する最大サイズのピアノ)完備、

見学スペース、交遊用フリーエリア開放など、音楽人にとって夢のような施設です。

その名も「TAGO STUDIO」ずばり多胡さんの名前を冠したスタジオです。

日本では外国のように人の名前が施設の名前に使われることが少ないので、これは珍しい、すばらしく名誉なことです。

単なるアイデアの段階ではありません。構想から二年の歳月を経て、すでに完成間近なのです。2014年の2月に完成予定、3月にオープンとのことです。

ただし、使用するには条件があります。

・地元のアマチュアには基本的に貸さない
理由は、これだけ最強のスタジオだと、市内のほかのスタジオから(あまりないみたいですけど)お客を奪ってしまい、経営が成り立たなくなるからです。
また、高崎に外からのミュージシャンを呼び込むことも意図しているからです。外から有名なミュージシャンが訪れれば、市内が盛り上がりますからね。
ただ例外もあって、音源オーディションなどを行って審査が通り、将来的に高崎市に貢献するような関係を結べば使用できるようです。

・使用者は高崎市を盛り上げることに協力する
格安(ほぼ無料)で貸し出しする条件として、スタジオの広報に協力し、高崎市の活性化に協力してもらうということです。
地域を盛り上げる行動を対価とするわけです。
市が税金で運営するわけですから、当然ですね。

すばらしいです。これは革命ですよ。

日本の公共事業としてバンドを応援するスタジオをやるなんて、「そんな馬鹿な」という話でした。それが本当に実現するんです。

来年以降、きっと話題になりますよ。「高崎にすごいスタジオがある!」といって、高崎にミュージシャンが集まってきます。
作曲家で起業家の山口哲一さんは早速使用するみたいです。

それにしても、よくあの融通の利かない日本の市に「バンドマンを育てるスタジオ」などというカルチャー事業に予算を出すことに合意させたなと、多胡さんの交渉術には驚きます。

その理由は、たまたま現職の市長が芸術の地、フランスの大使館出身で、文化事業の支援に理解のある方だったからだそうです。前の市長には大反対されたそうです。

フランスでは、ある程度地位の高い人が芸術活動に積極的に経済的支援をするのがある種ステータスになっている(そういう人をパトロンという)ので、

パトロンの支援だけで生活している前衛芸術家などがいます。「山海塾」という舞踏の一派は、日本の芸術なのにフランスのパトロンの支援を受けて生活しています。日本じゃ応援してくれないからです。

市長も、議会とは相当の議論があったようですが、多胡さんの熱意が伝わり、実現しました。本当にすごい。

市長は「高崎をリヴァプールのような文化都市にしたい」とおっしゃっているそうです。リヴァプールの姉妹都市にしようと。こんな市長が日本にいるんだなと、奇跡だなと思いますね。

群馬はBOOWYやBUCK-TIKなど有名バンドを輩出した地なので、すでに地域として実績があり、音楽的イメージとしてアピールできるものを持っているわけです。

もし、BOOWYのあのお二人、あの二人のHさんが応援してくれることがあったら、いまはロンドンとL.Aにいるあのお二人が、もしメッセージをくれたり、訪れたりしてくれたら、

それはアツいことになりますね。たぶん、あの二人はもう一緒にやることはないでしょうけど(苦笑)、個別にはきっと地元の活動に協力してくれると思います。

群馬県の交響楽団とのコラボレーションも予定しているそうです。

すごいですよね!地方にもこんなにすてきな作曲家の方がいるんだと思うと、嬉しくなります。

あなたも将来利用してみてはいかがでしょうか。東京から電車でいける距離なので、ちょっと遠出すれば使えます。